マギって底が深い1

物語って何度か読むうちに新しい発見とか、そうかこういう解釈ができたんだ、とかあるので、読み返すのは中身を知っていても楽しいものです。

マギを読み返してるんですけど、マギは深いですねー。
勧善懲悪ではない。主人公に敵対していても明確に間違ってるわけじゃないことが多い。
象徴的なのが白龍とジュダルです。
「俺たちはオリの中で都合のいいように生きなきゃならないのか」ってジュダルの叫びは心が痛みます。白龍はともかく戦争が好きで殺し合いが楽しいとか言っちゃうジュダルが、自分の人生つらいって言うんですよ。本当はもっと善く生きたかったみたいなことを言うんですよ。
「ジュダルは好きで殺してたじゃないか」って言う人もいますけど、そうじゃない部分もあって、そうじゃない部分が「こうありたかった」と理想を描くのに、どう足掻いても、どの道ジュダルは組織の強力さに逆らうことはできなかった。自分で生き方を選べなかった。
玉艶は物理的にジュダルより強いし、組織に洗脳されて育ってるわけですからね。
白龍も同じ。玉艶は彼を産んだときからアルバで、復讐するにも「何もできませんね？」って言われちゃってます。
そんな彼らが自分のされたことに対して「水に流せよ」「そのほうが丸くおさまるし君自身にとってもいいことだよ」って諭されても腹の虫がおさまらないに決まってます。腹の虫がおさまらなくて怒ってるのに怒ることも許されないのは、そっちのほうが間違ってるんじゃない？とこっちも思います。

アリババたち「それでも殺し合うのはよくないよ」「他の方法を探そうよ」というのも間違ってない。
だからどっちが善とか悪ではないのです。アリババもそのへんはちゃんとわかっていて、正しいと思ったことをお互いにぶつけあおう、と言う。
結局戦ってるんですけどね。紅明が「戦争は自分の意見を相手に押しつけるために起こる、そこに善悪はない」って話しをしていました。アリババVS白龍にはそれが思いっきり凝縮されてます。
しかし、後に二人はこのとき戦ったことを、殺しあったことを後悔しています。
戦っている最中はそれが自分のやりたいことだと信じてやったのに、後になってそれを「やるんじゃなかった」と後悔します。

マギってそういうところ深いなーって思うんです。物語の中で、過去ではよしとされてた行動が別の考えが出てきたことで覆される。
ほら、アリババがバルバットについて「失われた国を取り戻す」と発言したときはそれが最善の答えで作品でもそれが正解だ！って演出されるけど、生き返ってから「俺がいなきゃダメな国であって欲しかった」と反省するとかそうでしょう。あそこ私すごく感動しました。ずっとバルバットはアリババが帰る場所だと私も思ってました。でも、共和制に移行したバルバットにアリババ王子は確かにもういらない。いなくてもいい。取り戻すも何もない。既にアリババは王子ではないのだから。
アラジンじゃないけど愛する祖国に自分はもういらないんだって認められるアリババくんはすごいです。
アリババが帰らないことは、バルバットからしてみれば責任の放棄ですらない。
紅炎とのやりとりも、白龍との戦いもアリババにとってバルバットが主点だったのに、考え方次第で呆気ないとも言える、しかし円満な終着点に辿り着きました。私にとってあれはアリババとバルバットの感動のフィナーレです。

葛藤して、答えを出して、けど葛藤して出した答えだからといっても正しいとは限らない。正しさは人によって、また同じ人でも機によってころっと変わる。と、言葉だけでなくキャラの人生で、物語で何度も何度も体現してる。
今最終章でまとめてるわけですが、シンドバッドは悪人ではなく、やってることも「賛成できない」という理由でアリババたちは戦ってます。シンドバッドおじさんの主張していることも、当人にとっては「いいこと」。もしかしたは多くの人にとっても「いいこと」。
マギの物語は正誤や善悪で進むのではない。

そのあたり複雑でわかりにくいからヒットしてる（売り上げがよくファンも多い）わりに扱いが地味なんじゃないかな……。
悪い奴や嫌な奴をいい奴がぶっとばすほうがわかりやすくて楽しくて盛り上がりますし。ワンピースやHUNTER×HUNTERとかはそこにまた深い伏線入れてるのがマギよりも高い人気を得てるんでしょう。
マギはよくよく読んで、ただ読むだけではなく能動的に考えないと「解釈もできない」ことがありますからねー。

何か自分でもいってることがよくわからないんですが、マギ読んでて、キャラクターが、こう、「生きてる」なって感銘を受けたのでここに記す。
言いたいこともうちょっと考えよう……。

読んでる間マッサージクッションで背中マッサージしてたので、凝り固まった筋がほぐれて若干痛いです。
このクッションについても後日ジャパネットします。これすごいイイよ！！！！

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